知花竜海の音楽凡楽

ロック・レゲエ・ヒップホップ・沖縄民謡などをチャンプルーしたサウンドに、言葉遊びと深いメッセージをちりばめた歌詞で新世代の沖縄音楽を創り続けるミュージシャン/プロデューサー知花竜海(DUTY FREE SHOPP.)が、活動情報や日々のつれづれなどを書いていきます。

沖縄戦を子供達にどう伝えるか

昨日テレビで別冊・RBCザ・ニュース【何をどう語り継ぐ?戦後75年が問うこと】という特番がやっていた。
ちょうど慰霊の日に家庭平和学習を全力でやったとこだったので興味のあるテーマだったが、子供達は当然嫌がる。ゲームがしたい、と。そこを「ゲストにゴリとHYが出るよ」と言って無理やり説得して子ども達と一緒に見た。

コメンテーターのガレッジセール・ゴリの、これまで「沖縄」と「エンターテインメント」というものにひたすら真摯に向き合ってきたことがひしひしと伝わってくる素晴らしい話しぶり。最後のまとめで「人殺しが犯罪にも英雄にもなる、それは全て国が決めること、だからそれを決める偉い人達をしっかり選ばなきゃな」と言ってくれた。島にこんな先輩がいて良かったなと思うと同時に、自分もそういう風に思ってもらえるような恥ずかしくない生き方をしないとな、と思った。

母校の読谷高校が出てた。毎年伝統の慰霊の日の創作平和劇、まだ続いてるんだな。なんか嬉しい。校舎が建て替わって面影がないけど、校門だけはそのままでキュンとなった。所属してたロック部の顧問だった伊佐先生がチビチリガマのガイドとして出てたよ。お元気そうで何より。

沖縄の学校が平和資料館やひめゆり資料館を平和学習で訪れるのがピークの95年から半分以下に減っていて、全学校数の半分以下しか来てないらしい。当たり前に沖縄の全校が行くものだと思ってた。平和学習の時間が削られがちで、図書館の展示のみ、というような学校もあるらしい。ショック。

同じくコメンテーターとして10年前に若狭公民館でやった「『平和学習』のあたらしいカタチ」というフォーラムで共演したことのある沖縄国際大学非常勤講師の北上田源さんが出ていた。こちらもお元気そうで何より。

北上田さんは平和学が専門で、体験者が年々減っていく中で、歴史をどう継承していくかに取り組んでいる。戦場の悲惨な体験を伝えるのはもちろんだが、それで終わってはいけない。なぜあのような戦争に突入していったかというプロセスを教えないと、というようなことをおっしゃっていた。

番組では広島と長崎の平和学習についての取り組みを紹介。広島では小学校低学年、高学年、中学、高校と四段階に分けて、一貫した平和学習カリキュラムとテキストを用いて、段階的にレベルを上げていくという。一番最初は「自分の宝物」を絵に書いて発表させる
ところからスタート。

長崎からは被爆体験を伝えたい人と、聞きたい人のパートナーマッチングを行い、聞いた人が語り部の役目を担えるように育成していく制度を紹介。どちらも素晴らしいと思う。沖縄も是非参考にしてほしい(もし既にそういう取り組みがなされていたらごめんなさい。)

ラストのHYの「時をこえ」の演奏が全てを持っていく。何というパワー。強い。あの壮大な曲を四人だけのサポートなし同期オケも無しの一発どり演奏で聞かせるHYの実力よ。ちびらーさい。最高すぎ。胸への伝わり方がやばい。
「一度でいいからフルバンドでエイサーもいるバージョンを生で見てみたいやー」ってカミさんに言ったら「泣くはずやー」って。まじで沖縄の人でこれ聞いてウチアタイしない人いるのかなっていうぐらい。

作り手の情熱が伝わる素晴らしい番組でした。ありがとう。

うちの子供たちでさえ「毎年平和学習で同じことを習うし同じ講話を毎年聞かされ正直飽きる」と言う。番組でもその問題を取り上げていた。「戦争は怖い、繰り返してはいけない」という当たり前の入り口だけで毎年終わってはいけない。年齢に応じて色んなテーマや角度から教えていく必要があるだろう。スマホを持つようになれば、自分たちでネットから色んな話を拾ってくるようになる。そこには正しいことも、正しくないこともある、それを見抜いたり、俯瞰で判断したり出来る力をつけて欲しい。

なので今年の慰霊の日はレジュメを作って丸一日みっちり子ども達と自宅で平和学習した。戦争の悲惨さや体験談は学校の平和学習に任せて、うちでは慰霊の日制定の経緯と意味、なぜ学ぶ必要があるのか、沖縄戦に突入していく経緯、国家というシステム、憲法のこと、今行われている戦争や領土問題、琉球史、植民地という概念、「お国のために死ね」という価値観と、「命どぅ宝」という価値観、どんな歴史や物語の中で生きて死ぬか、みんなで音読したり、映画を見たり、全力で話した。いつか平和のタネが芽吹くことを祈って。

今(なま)までぃまーちゃる人(ちゅ)ぬ 達(ちゃー)ぬ無念(むにん)
忘してぃならんさ 気張(ちば)らなや
知花竜海「海鳴りの島」


HY「時をこえ」



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