知花竜海の音楽凡楽

ロック・レゲエ・ヒップホップ・沖縄民謡などをチャンプルーしたサウンドに、言葉遊びと深いメッセージをちりばめた歌詞で新世代の沖縄音楽を創り続けるミュージシャン/プロデューサー知花竜海(DUTY FREE SHOPP.)が、活動情報や日々のつれづれなどを書いていきます。

慰霊の日に寄せて

6/23 沖縄戦が集結したとされるの慰霊の日
(期日設定には諸説・賛否あるがここでは割愛)

この日は僕の創作活動の原点でもあります。

沖縄県では毎年慰霊の日に向けた平和学習の一環として
県内の全ての小中高生に「平和の詩」「平和の作文」「平和の絵」などを
授業で書かせます。

読谷中学校時代に僕も授業で平和の詩を書きました。
それをたまたま国語の先生が県のコンクールに勝手に応募し、
なんと最高賞である沖縄県知事賞を受賞しました。
そして戦後50周年という節目の年に
摩文仁の慰霊祭・沖縄全戦没者追悼式の場で
全県の児童生徒を代表してその詩を朗読するという
大役を命ぜられたのです。

節目の年ということもあり、
琉球新報、沖縄タイムス両紙にその詩がどかーんと載りました。
親戚のおばさんがそれをラミネートして持ってきました。
取材も沢山受けました。

中学三年のことでした。
もちろんその頃は音楽もまだやってないし、
詩も書いたことなどありませんでした。

しかし、それをきっかけに自分で詩を書き始めました。
自分の思いを形にし、人前で発表するということの味をしめたのです。

高校三年間はひたすら詩を書き続けました。
ほとんどは思春期の恥ずかしい恋の詩でしたが笑。
高二からバンドを始め、今に至ります。

そういう意味で、
僕の創作活動の原点は慰霊の日の「平和の詩」です。

今日はそれを紹介してみようと思います。

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戦後五十周年記念  沖縄平和祭'94 
詩の部門最優秀作 (1994年) 


「光がはねて、とてもまぶしい」 
読谷中学校三年 知花竜海    

ポツリ、  
ポツリと降りだした雨  
久しぶりの雨  
顔を空にむけ、身体をひろげ  
うりずんの雨を全身でうけとめながら  
僕は  
走りすぎていく人たちを見ていた    

五十年前のこの雨の中  
肉親を失い  
傷をおい、手足をひきずり  
食べるものもなく  
着るものもなく  
必死に逃げまどっていた人たちは  
この降りしきる雨に  
すべてを洗い流してほしいと  
ねがったのだろうか    

穴の中では  
大人のうめき声、子どもたちが泣き叫ぶ  
ザァーザァーと降る  
この雨の音は  
この声を消してくれただろうか  
いやしてくれただろうか  
きっと、さらに大きく、暗く、重く  ひびきわたらせたのだろう    

僕はにくい  
人の営みを、人の心を、生きる命を  
一瞬にして無にする戦争が  
僕はちかう  
海と風のかおるこの島を二度と殺させないと・・・  
僕はいう  
世界中の人々は皆愛しあえる    

雨がやんだ  
雨あがりのアスファルトに  
光がはねて、とてもまぶしい  


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この詩は、小学校の時に体験した
読谷村のチビチリガマという
戦時中に集団死(自決)があった壕(洞窟)の中に入って
懐中電灯を消し、当時の暗さを実感するという
平和学習の経験を思い出しながら、
雨を橋渡しにして
現代と過去を対比させながら書いたものです。

僕の小学生当時はまだチビチリガマの整備が行われておらず、
草むらをかき分けて入り、骨や眼鏡やカミソリや入れ歯や薬瓶など、
沢山足下に転がっていました。

チビチリガマの前に立てられた金城実さんの平和の像を
右翼がめちゃくちゃに破壊したり、
読谷高校の卒業式の日の丸事件や、
国体での日の丸焼き捨て事件など、
子どもながらにアイデンティティーを考えさせられる出来事が地元でいくつもありました。

うちのオジーオバーも黙認耕作地でサトウキビを作っていたし、
少しだけど戦争の話も聞きました。

もちろん米兵絡みのいろんな事件事故もありました。
少女暴行事件もありました。

2004年には大学にヘリも墜落し、
今に至るまで、沖縄の「戦争」は終わっていない。

それを象徴する昨日の新聞
慰霊の日に寄せて

そういうのを全てひっくるめて、
二十歳の時に書いたこの曲を慰霊の日に捧げます。
知花竜海/カーミヌクー


うちなーをなめんな!


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※ちなみに
沖縄の子どもたちの平和の詩の過去の受賞作品をまとめた
以下の本に、僕の詩も載っています。詩を書いた子達それぞれの現在も載っていて
興味深い一冊です。

★写真の中の少年 —沖縄発 児童・生徒の平和メッセージ
(2010 駒草出版)
慰霊の日に寄せて


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