知花竜海の音楽凡楽

ロック・レゲエ・ヒップホップ・沖縄民謡などをチャンプルーしたサウンドに、言葉遊びと深いメッセージをちりばめた歌詞で新世代の沖縄音楽を創り続けるミュージシャン/プロデューサー知花竜海(DUTY FREE SHOPP.)が、活動情報や日々のつれづれなどを書いていきます。

慰霊の日、うちなーぐちのスピーチ

去った慰霊の日、読谷村の大湾区の慰霊祭で、区民を代表して88歳の松田平栄さん、がすべてうちなーぐちで挨拶をされました。とても思いのこもったスピーチで感動しましたが、その場にいた人も特に若い人は言葉がわからなかったと思いますので、自分に出来ることとして、せっかくYouTubeに動画も残っていますので、これを訳してこの方の思いを伝えたいと思いました。

6分半ほどのスピーチですが、ぜひ読みながら聞いてみて下さい。
https://youtu.be/YFV4g9OiWjo?t=9m25s




ぐすーよー 今日(ちゅー)拝(をぅが)なびら くんぐとぅ暑(あち)さいに
みなさんこんにちは、このような暑い中

またん今度(くんどぅ)ん 慰霊の日にちょーさやーんでぃち思(うむ)いねー懐(なち)かしくないびーん
また今年も慰霊の日が来たかと思うと悲しくなります。

我ったーよーさい、なー年(とぅし)取(とぅ)ってぃ
私たちはもう歳をとって

なー15ないに戦争やいびーたしが なー88なとーいびーん
15の頃に戦争でしたがもう88になっています。

なー70年余(あま)い過ぎとーいびーしが
もう70年余り過ぎていますが

何時(いち)なてぃん戦世(いくさゆー)ぬ哀り 忘(わし)らりーびらん
何時になっても戦世の辛さは忘れることができません

童達(わらばーたー)んかい話しちん「あんるやがやー」
子ども達に話しても「そうなの〜」(と言って)

経験さんうちねーよーさい、分かいびらん 当たてぃいんだんとーよーさい
経験しないうちは分かりません。なってみないと(分からないん)です

うんじゅなーん まーがら病(や)むしぇー 人ぬ病(や)むしぇー分かいびらん筈(はじ)
あなた方も、どこか痛いときに人の痛みはわからないはず

どぅーぬ病(や)むしぇー分かいしが 人ぬ病(や)むしぇー まーやてぃん分かいびらんくとぅ
自分の痛みはわかるけど、人の痛みはどこも分からないので

戦世(いくさゆー)んでぃ言しぇーくりから絶対 作(ちく)てーならんで言る事(くとぅ)
戦世はこれから絶対作ってはいけないということを

どーぬ病(や)むる如(ぐとぅ)、人(ちゅ)ん病(や)むる筈(はじ)どーやーんでぃ
うりさーに考(かんげー)てぃ呉(くぃ)みそーりよー
自分の痛むように、人も痛いはずだと、このように考えて下さい。

我達(わったー)のー、戦世(いくさゆー)ぬ話(はなしぇー) しー欲(ぶ)しこー無(ねー)びらん
私たちも戦世の話はしたくはありません

いっぺー哀りっし、なままでぃ生ち抜でぃちょーびーぐとぅ
大変な辛い思いで今まで生き抜いてきていますので

うんじゅなーさーに、救(すく)てぃ
皆さーに 力貸らち呉(くぃ)みそーちゃぐとぅる
あなたがたが助けて、みなさまが力を貸してくれているからこそ

我達(わったー) くぬ年寄(とぅすい)んなままでぃ生ちちょーいびーる
私たち歳寄りも今まで生きています。

戦(いくさ)なれー きさなー居(をぅ)らんなとーいびーん
戦争になればとっくに死んでいます

戦世(いくさゆー)ぬ場ねーよーさい、年寄やうっちゃんぎれー
なー手引ちん歩っちうさんぬーうっちゃんぎれーんでぃち
戦世では、年寄りはほっておけ、手を引いて歩けない者はほっておけと言って

うっちゃんぎてぃ山んかい逃んぎてぃいんじょーいびーくとぅや
(年寄りを)ほっておいて山に逃げていますので

我ったー年なれーから なー歩っちうさんなれーから
なー居(をぅ)らんなとーしぇー 当たい前るやいびーる
私たちの歳になれば、歩けないようになれば死んでしまったのは当然です


なまぬ如(ぐとぅ)っし平和やれー はーなー年寄(とぅすい)ん宝やさやーんち
皆さーに いっぺー重(うむ)んじてぃ呉(くぃ)みしぇー如(ぐとぅ)
今のように平和であれば あぁお年寄りは宝物だねといって
みんながとても大切にしてくださりますので


我達(わったー)んいっぺー楽しみやいびーん
私たちもとても楽しみです。

やいびーしが くぬ戦んでぃ言しぇー おーえーからる始まいびーぐとぅ
しかし、この戦争という者は喧嘩から始まりますので

人(ちゅ)おーえーさん如(ぐとぅ) 皆(んな)どぅしぬちゃー仲良く
人と喧嘩しないように、みんな友達仲良く

うんじゅなーんくんぐとぅっし くぬ世ぬ中
まじゅんさーに毎日(めーにち)楽しく暮らち行けーやーんでぃ
みなさまもこのように この世の中を一緒に毎日楽しく暮らしていこうという

こういう心持ち持(むっ)ちょーけーよーさい、ぬーあいびらんしが、
こういう心を持っていれば何も起こりませんが

ありがな やな口(ぐち)はじまれーからよー
やな口(ぐち)始またい、何がな人事(ちゅぐとぅ)呼(ゆ)だいしーねー
うりからどぅ戦(いくさ)始まいびーんでーや
それがもう文句が始まったり、人のことを悪く言ったりすると、そこから戦争が始まっていくのです

やいびーぐとぅ なま世界中 居(をぅ)てぃん
戦(いくさ)そーる所、幾所(いくとぅくる)あいびーしぇーやーさい
なので、今世界中でも戦争しているところがいくつもありますよね

我ったーん、くぬ日本(にほのー)、戦(いくさ)無(ねー)んぐとぅし
うんじゅなー皆(んな)さーに頑張っていかんとないびらん
私たちこの日本も、戦争のないようにし、みんなで頑張っていかないといけません。

戦(いくさ)しーねー、始まれーからよーさい、止(とぅ)まいびらん
戦争は一旦始まってしまうと止まらないものです。

むる家(やー)むる無んないびーん
家も何もかも無くなります

うんじゅなーがー分かいびらんしが
若さる人(ちゅ)ぬ達(ちゃー)がー分かいびらんしが
物(むのー)無びらんたんどー
あなた方 若い人はわからないと思いますが、何ひとつ無かったですよ

我達(わったー)くまかい帰(けー)てぃ来んよーさい
私たちがここ(大湾区)に帰って来ても

山から降(う)りてぃ山原(やんばる)んかい居いびーたしが
山から降りて山原(北部)に居りましたが

山から降(う)りやーに収容所んかい集(あち)みらってぃ
山から降りて収容所に集められ、

うぬ収容所から また くまんかい替われー 次の収容所かいんち 替わい替わいっし、
この収容所からまたここに移ったと思えば、また次といって転々とさせられ、

あとシマんかい帰(けー)りよーんでぃち
読谷山(ゆんたんじゃ)んかい帰(けー)りよーんでぃちやぐとぅさい、
あとは故郷に帰ってよいということで読谷に戻って良いということで

シマんかい帰さってぃ、波平(はんじゃ)んかい帰(けー)さってぃ、
故郷(読谷)にもどって(はじめは)波平区に住まされて

波平居とーてぃ半年ばかい暮らちゃぐとぅ
波平で半年ばかり暮らしたから

今度、古堅高校、大木(うふぎ)んかい帰りよー、楚辺(すび)んかい帰りよーんでぃち
今度は古堅高校(あたり)大木区に帰りなさい、楚辺区に帰りなさいといって

帰さってぃ、またうまからよーさい、また半年か一年ばかさぐとぅ
帰されて、またそこから半年か一年ぐらいしてから

なー大湾(おーわのー)帰(けー)らりーんどーんでぃち
やっと大湾区に帰れるよといって

あんししーる大湾(おーわぬ)んかい帰(けー)てぃちょーいびーる
そうやってやっと大湾に帰って来たのです。

なー我ったーん 戦世(いくさゆー)ぬ後(あとぅ)んよーさい、先(さち)んいっぺー哀りし
くん使(ちかー)てぃちょーいびーしが
我々は戦後も大変辛い思いをしてこき使われてきましたが

なまぬ世ぬ如っし、いっぺー栄(さけー)る世ぬ中 戦(いくさ)絶対しぇーならんどー
今のようにとても栄えた世の中 戦争しては絶対けません

戦(いくさ)しーねー皆(んな)哀りすんどー
戦争するとみんなが不幸になるよ

噛み物無らんどー、何(ぬー)ん無らんどー、家ん無らんどー
食べ物もないよ、何一つないよ、家もないよ

とーうんじゅなー考(かんげー)てぃんじみそーれー
みなさま考えてもみてみてください

家(やー)ぬ無らんとぅか着物(ちん)着(ち)るかー無(ねー)らんとぅか、噛み物(むぬ)無(ねー)らんでぃ
家がないとか着るものがないとか食べるものがないとか

なまぬ世の中にうり考(かんげー)たる人(っちょー)あんまり居(をぅ)いびらん
今の時代にそれで悩んでいる人はあまり居ません

哀りしいねーよーさい、誰(たー)がなが持(む)っちち呉(くぃ)しぇーやーさい
貧困で大変な時は誰かが持って来てくれるでしょう

いふぃぐわー困(くま)とーさーんでぃ言いねー、あい、ちゅけー隣(とぅない)
少し困っていると言えば、ほら隣近所(で助け合う)

戦世(いくさゆー)始まれーからよーさい皆(んな)無(ねー)んどぅあぐとぅ
戦争が始まったら何一つなくなるので、

皆(んな)一大事(いちでーじ)ないびーん
みな(自分のことで)精一杯になります

やくとぅ戦(いくさ)絶対しぇーないびらん
なので戦争は絶対にしてはいけません

くまんかい祀(まち)らっとーる人(ちゅ)ぬ達(ちゃー)やよーさい
ここ(慰霊塔)に祀られている人たちはですね

うんぐとーなー哀りっし、祀(まち)らっとーいびーぐとぅ
このような辛い思いをして祀られていますので

くぬ祀(まち)らっとーる人(ちゅ)ぬ達(ちゃー)が 我達(わったー)暮らしがた、見守(みーま)んてぃ、
この祀られている人たちが私たちの生活を見守って

かんし平和な世の中 作(ちゅく)とーいびーぐとぅ
このような平和な世の中を作っていますので

我達(わったー)んくりから後(あとぅ)ん、孫(んまが)子(くゎ)ぬ達(ちゃー)んかい
私たちもこれから先も、子孫たちに

くりからんなまぬ如(ぐとぅ)し、平和し、暮らしいけーやーんでぃ
我んねー思とーいびーん
これからも今のように平和に暮らしていこうではないかと私は思っています

うんじゅなーんあん思(うむ)とーる筈やいびーぐとぅ
みなさまもそう思っていると思いますので

くりから平和な世(ゆ)ぬ中っし、皆(んな)肝(ちむ)合わち楽しく生活していきましょうね。
これから平和な世の中に、みんなで心を一つにして楽しく生活していきましょうね

良(ゆ)たしく御願(うにげー)さびら
よろしくお願いします



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