知花竜海の音楽凡楽

ロック・レゲエ・ヒップホップ・沖縄民謡などをチャンプルーしたサウンドに、言葉遊びと深いメッセージをちりばめた歌詞で新世代の沖縄音楽を創り続けるミュージシャン/プロデューサー知花竜海(DUTY FREE SHOPP.)が、活動情報や日々のつれづれなどを書いていきます。

『新しい世界』エンジニア伊東良則インタビュー

僕らのような規模のインディーズの場合、雑誌などでアーティスト側の思いや内容の背景などは取り上げてもらえる機会があったとしても、そのサウンドや音源を作り上げたバックステージにまでスポットが当たることは殆どありません。だけどみんなそれぞれ本当に時間をかけて心を込めてこだわりを持って作っているし、僕もサウンド&レコーディング・マガジンなどの音響技術・録音技術の専門誌を参考にしたりしながら、自分たちのイメージを実際に音に具現化していくという技術的な作業をいつも追求しています。メッセージばっかし注目されるけど、俺たちは音楽をやってるんだよ。そんな思いで、今回自分たちでエンジニアインタビューをやってみようと思いつきました。
今回の『新しい世界』の録音・ミックス・マスタリングと、まさに知花竜海と事実上の二人三脚で作り上げた縁の下の力持ち、エンジニア伊東良則さんのインタビューです!
知花竜海

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『新しい世界』エンジニア伊東良則インタビュー

面白かったのは各楽器のアーティストさんのポテンシャルの高さです。
■今作に使用した主な機材環境を教えて下さい。

伊東:AVID PRO TOOLS HD で録音。マイクプリはSSL AWS900+に付属のものとNEVE1073がほとんどでした。
コンプはUREI1176、MANLAY Variable Mu Comp。
EQはAPIの550,560、SSL900+のもの。
ミックスに関してはPROTOOLS内のプラグインがほとんどで少しだけアウトボードを通したりしてSSL900+にステムミックスを通してまとめました。

■サウンドメイクに関して知花竜海との役割分担を教えて下さい。また、制作にあたり伊東さんから提案したことなどはありますか。

伊東:ほとんどの曲にたつみさんの弾き語りが入っていたのでイメージはつかみやすかったです。
たつみさんと相談したことはテイクの管理ですかね(笑)
たつみさんがどこに何が入ってると、わかりやすいかっていうのを確認しながら録音をすすめていきました。
サウンドイメージに関しては、かなりまかせてもらえたのでやりやすかったです。

■知花竜海はコード進行とテンポだけを決めて様々なアドリブフレーズネタを録音し、編集でアレンジを組み立てていくという手法が特徴的ですが、その面白さや大変さなどはありましたか?

伊東:テイク管理で事故るのが一番怖かったのでそこは慎重にやりました。
OKテイクは普通ひとつなのですが、今回の場合OKテイクをたくさんもらうので、それがどこに入っていて、どれがどのテイクかをたつみさんも細かくチェックしていました。
面白かったのは各楽器のアーティストさんのポテンシャルの高さです。
おおっ!とたつみさんと二人でうなる場面が多かったです。

曲を優先してアンサンブルとメロディに集中した結果が今回の作品です。
■アコースティックギターが全曲に入っていますがアコースティックアルバムなイメージになっていないのが印象的だと思います。ギターの録音・ミックスに関してはどのようにアプローチしましたか?

伊東:たつみさんの歌のグルーブとバンドのグルーブをたつみさんと一緒に合わせていった感じです。
普通なら{せーの}でやるような楽曲も仮歌を聞かずに録音したものもあったので、そこで歌が別次元にいるように聞こえないようにイメージして作りました。
アコースティックなイメージになっていないのは僕が普段聞いているものがオーソドックスなアコースティックものが少ないからかもしれません。
アプローチ込みで伝わったほうがいいのかなとも途中で考えましたが、曲を優先してアンサンブルとメロディに集中した結果が今回の作品です。

■今回のレコーディングで特に印象に残った録音などあればお聞かせ下さい。

伊東:全部印象的で(笑)ミックスしているときもあーこれはあのときだなとか思いながらやっていました。
録音に関してはたつみさんのOKがでるまで(OKテイクがあったとしてもテイクを重ねるため)
やり続けるという修行みたいな部分もあって集中力がものすごく必要だったのが印象的です。

■収録曲の中で太陽風オーケストラが演奏している『旅ダチ』だけが六年前の録音ということですが、その時の状況を教えて下さい。また他の楽曲との違いで意識したことはありますか?

伊東:旅ダチに関しては記憶がものすごく曖昧ですが、たしかバンドでリハーサルしてから
録音に入ったような気がします。それ以外は今回とほとんど同じアプローチでした。
グルーブに関してはみなさん長くやっておられるメンバー同士ということで、バラバラに録音しているのにばっちりだったと記憶しています。
他の曲との違いに関してはたつみさんと相談しながら「あのとき」のテイストも
残しながらということだったので、今の自分VS昔の自分という感じでやりました(笑)

■ボーカル録音に使用したマイクとセッティング、エフェクト処理などのアプローチを教えて下さい。

伊東:ボーカル録音に関してはスタジオで録音したものは曲ごとにノイマン87aiと49とシュアー57vir、たつみさんのブルーのマイクなどいろいろ試しながら録音しました。
マイクプリはNEVE1073にコンプがUrei1176です。
スタジオの都合でたつみさんの家で録音したものもありますが
テイクがまとめられて問題がなかったので混ぜて使ったりしています。

よく聞くと各楽器の呼吸みたいなものがきちんと聞こえると思います。
■今作のミックス、マスターそれぞれのこだわり、サウンドの聞き所を教えて下さい。

伊東:ミックスに関してはPROTOOLSでまとめてSSL AWS900+にステムで出してミックスしました。
テイクの違いによるグルーブの若干のずれはコンプレッサーなどで細かくやっています。
ほとんどの楽器、声でパラレルコンプレッションという手法を使ってミックスしています。
サウンドの聞き所はマスター作りのときにボクが提案したのですが
すこしだけダイナミクスに余裕をもってマスタリングしています。
よく聞くと各楽器の呼吸みたいなものがきちんと聞こえると思います。
おっきい音で聞いてもちっさい音で聞いてもよくしたかったので、とてもむずかしかったです。

■今回は生ドラムと打ち込みの曲がありますがバランスなどで特に意識したことはありますか?

伊東:打ち込みと生楽器の混合が僕の持ち味だって、誰かに言われた事があったので、そうか、と思ってあまり意識せずにやっています。
僕がエンジニアになったころくらいからドラムの打ち込み素材(特に生もの)の音が格段によくなったので、ずっとやっていたらこれが普通になってしまいました。
意識したところは打ち込みと生楽器のグルーブのポイントです。

■どの辺のリスナー層へのアピールを意識しましたか?ターゲットなどがあれば教えて下さい。

伊東:特に誰を意識したとかはありませんが、現在いろんな環境で聞かれるっていうのを逆手にとって、違うスピーカー(イヤホン、ヘッドホン)で聴けば、こんなにも世界がひろがるんだよっていうのを感じてもらえればいいなと思います。
もちろん、どんなスピーカーで聞くのも自由ですが、いつも聞いているものと
違うもので聞いても新しい発見があるっていうのを知ってもらえればと思います。
ターゲットに関しては音楽が好きな人すべてにっていう感じです。

■現在主流となっているネット配信やiPodでのシャッフル再生といった聞き方を特に意識しましたか?

伊東:シャッフル再生に関してはこの人の他の曲はどんな風になってるんだろうって、シャッフル止めてアルバムで聴いてもらえたらバンザイという感じです。
シャッフルで音量が安定しないのはボクもいつも体験しているので
でかすぎないように気をつけました。
ネット配信に関してはmp3などになったときに音がつまりすぎないように
空間の隙間を意識してミックスマスタリングしています。

お互いにここだーっていうタイミングが合った気がします。
■ずばりエンジニア伊東さんから見た知花竜海というアーティストや本作の面白さとは。

伊東:たつみさんは出会った頃からずっと音楽の仕事をしているイメージなので、ソロ初と聞いたときは今までどれだけの人の為に働いてきたんだろうと思いました(笑)
今回のレコーディングの相談をうけたときは、お互いにここだーっていうタイミングが合った気がします。
生活のタイミング、時代とかいろんな流れが合った気がしました。

今回の作品を聞いてもらって、これが起点になって
どんどんいろんなことが始まればいいなと思います。

■ありがとうございました。

伊東:ありがとうございました。

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伊東 良則(ITOH YOSHINORI) Recording engineer / mixer
1980年12月5日生まれ 射手座 AB型 大阪府泉佐野市出身
大阪スクールオブミュージック出身
2004年Spice Music(現Spice Production)入社
2010年スタジオ名を Quintet Recording Studioに改名
スタジオURL http://www.qr-st.com/
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